2026/03/10

火の滝が堂に飛び散るお水取り

 

                                                                                                                            (ネットより)


 東大寺のお水取りのころはみっしり寒い、という記憶がある。


 然るに今年はなにやら春めいていて、ほわほわした空気が漂っている。むろん遠く離れ

た奈良だから、直接にお水取りという行事を見たわけではない。だからお水取りの日が寒

いのか暖かいのよく知らないけれど、やはり温暖化で今年は暖かいのではないか?


 テレビなどで見る限り、大たいまつが二月堂の回廊を駆け回るのは、ずいぶん豪放なそ

して豪胆な行事に思える。万事が静かなお寺の行事としては、珍しいのではないか。寒さ

に縮こまっている時期だから、豪放豪胆な炎の行事は見ていて元気が出る。



 このお水取りの行事が終わると、奈良にも本格的な春が来るという。奈良の春、と言え

ばたちまち目の前に牧歌的な妄想が浮かんでくる。広い東大寺の若葉、山の辺の道のタ

ンポポやツクシ、朱塗りが青空に映える朱雀門・・・奈良と言えばなんと言っても牧歌だ。


 奈良には一度だけ行ったことがある。うんと大昔のうんと若いころ一度だけ、どこを巡っ

たのかよく覚えていないけれど、東大寺は微かな記憶が残っていて、たしか二月堂も見た

ように思う。外はバスに乗ってわざわざ法隆寺まで行ったようだが、はっきりしない。



 京都から奈良に言ったので、その落差は大きく感じられた。奈良は取り澄ましたところが

なく、素朴で田舎で、法隆寺の斑鳩あたりはまるでどこかの田舎の野辺を歩いているよう

に感じられた。すっかり気に入って、呑んで遅く帰ったら旅館を締め出された。


 この時は京都、奈良、大阪をちょびっとづつ経巡ったのだけれど、大昔だからもうすっか

り変わってしまって、どこも思い出すこともできないに違いない。こっちの頭の暗闇に、そ

の時の微かな記憶が残ったが、そんな場所はもうどこにもなく、どこかに消えてしまった。



 

2026/03/09

春めいて合掌屋根を葺き替える

 



 白川郷を取り囲む山々に残雪がまだ分厚い


 しかし風はもう春のように温かく、合掌造りの大屋根の間を縫って歩いて心地が良い。

驚いたことに、雪解けが始まったばかりなのに、もう屋根の吹き替えが始まっていた。映像

で見たように村中総出、ということではなく、10人足らずの人足が屋根に上っている。


 これだけの数の茅葺大屋根があるのだから、ひょっとすると雪解けと同時に屋根の吹き

替えを始めないと、又来る冬までに終わらないのかもしれない。しばらく見ていたけれど、

職人たちは要領よくスムーズに、どんどん吹き替えを進めていくようだった。



 里の中の田んぼや畑の隅にまだ少し雪が残っていたが、ほとんどは土が露出して畔に

は若草も萌え、「雪解け」の季節に突入したという風情があふれている。田んぼの間に曲

がりくねる細道は、もうかんかんに乾いてして、土埃が舞うかと思うほどだ。


 家の庭に近所の人が4,5人集まっていどば井戸端会議のようである。この季節、何より

うれしい気持ちになっているだろうと思う。長い雪の下の生活からようやく解放されて、さ

あ、これからは一直線に春に向かう。花が咲き鳥が歌い風が薫る春である。



 里の奥の小高い丘に登ってみた。山にすっぽりと囲まれるように存在している里がひと

目で見渡せる。周りを囲む山肌にはまだ白く輝く雪が残っている。裸になったままの灰色

の雑木が立ち並び、それを杉林が黒く囲んでいる。山はまだ冬のままだ。


 空には白く薄い雲が張り付いて動かない。その雲の下に灰色の乾いた街道が一本貫い

ているのが見える。その街道の右左に合掌屋根が高く抜きん出ている。手前のほうには

雪が解けて畔を現わした小さな田んぼが見下ろせる。里はもう春が始まる。




2026/03/08

陽ざしまで黄色に染めて花ミモザ

 



 久しぶりに公園を歩いたらミモザが咲いていた。


 あまり馴染みの花ではないけれど、この花の近く一帯の空間ををパッと明るくしている

ように見えるて、人が大勢まわりに集まって、大撮影会をしていた。春先の黄色の花は、ど

れもみな、その辺りの空気を明るくしてしまうようである。山茱萸、マンサク、連翹など。


 近くに木蓮の木があり、これもいつの間にか満開になっている。3月になって、季節がぐ

っと進んだ感じになった。それはもう、「劇的に」と言ってもいいような変化であり、季節は

正直者で、きちんきちんと春の仕事をしつつある。エライもんだ。



 河津桜も満開、あるいは少し散かけていて、「いつの間に! 」という感じだ。染井吉野も

いいけれど、河津桜がずうう~っと続いている並木道も大いに見ごたえがある。けれど、

河津に行ったことはない(映像だけ見た)。各地にいろんな色の桜が増えればいいと思う。


 寒緋桜というのも咲いている。紫がかったような赤のうんと濃い色で、咲きかけは俯い

た花をつけている。この桜は色が濃くはっきりしているので、数本並んでいても見事だ。

沖縄など暖かい地方の桜だそうだが、この公園でも毎年元気に咲く。



 公園の花は、総体として梅が後退して、桜の類が前面に出てきた感じだ。そうして地面

を見ると、遅咲きの梅の下で水仙の鮮やかな黄色が覆い尽くし、大勢の人が写生してい

る。絵が描ける人は幸いなるかな、といつも思う。無芸無能で終わるのはサビシィー! 


 もうしばらくすると公園の景観はまたゴロリと変わっているだろう。染井吉野が大手を振

って咲き、連翹や雪柳が色どりを添え、桃も大きな花を咲かせるかもしれない。しかしそ

のころは野っぱらの道端にもタンポポが群生し、小さな野の花が勢いづいているだろう。




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