やっぱり夏は花火だという。
庭ともいえぬ狭い隙間で、こればかりは盛大に敢行する。火薬に火がついて一瞬昼のよう
な光がはじけ飛び、その上バチバチと火薬の音がして、なんだか少し怖い。怖いけれど様々
な色の炎は美しい。美しいから手が離せない。瞬きのうちの夢のようだ。
その娘もドカドカと学年が上がって大人になってゆく。今ではもう花火に夢中になるのか
どうか、極めてこころもとない。子供はほんとに瞬く間に大人になってしまう。そうして少
しづつ大人の世界から離れ、自分の世界を築き上げる。爺はほろ苦く眺めるしかない。
家庭花火はともあれ、大人のための花火大会は、三浦半島の海岸ぷちの花火が強烈に印象
に残っている。なにしろ腰を下ろした砂浜の、すぐ鼻の先の海でぶち上げるのだから、もの
すごい音と光である。ドカ~~ンで見上げれば鬼ほどもデカイ光の滴が頭上に降って来る。
少し離れた民家の庭先でビールを傾けながら見ていれば、極楽、極楽、こんないいことは
ない。三尺玉が連発して、次々に赤、青、黄の大輪の花を咲かせ、滴となって波間に消えて
ゆく。酔うほどに美しく、酔うほどに夢の中に溶け込んでいくようだ。
花火大会も、有名どころでは、長岡、横手、それに隅田川などがあるようだが、三浦半島
の花火を見たから、もう一生分を見た気になって、出かけていこうという気にならない。だ
いいち、そういうところでは蚊の大群にガシガシ食われるのではないか。
その上、人が無暗やたらにいるだろう。ワアワア言って何が何だか分からなくならない
か。見終わって帰るとしても、ちょっと歩けばいいや、ということにならないだろうし、考え
るだに大変そうである。誰もいないところで自分専用の花火大会なら見てもいい。
孫も花火も、思えば遠くなりにけり。