忍野八海は富士の麓にある。
ときおり行ってみたくなる。最初に行ったときに、その湧き水の池にイタク感動
した。5mもある深い池の底が、きらきら見えるほど水が澄んでいる。富士の伏流
水がここに忽然と湧き出しているらしい。なにしろ水が美しい。
周りの田舎びた佇まいもよかった。池の水を集めた小川の縁を、のんびりトコト
コ歩くのがとても楽しい。この川は流れ下って桂川となり、更に相模川となって湘
南の海へと続く。月見草が咲いていた。富士は真ん前にどっかりと。
この時の印象がとても強かったので、しばしば頭にぽっかりと浮かび上がり、ま
た行ってみたくなる。それで数年前、車をごろごろ転がして行ってみた。ところが
どっこい、東アジア、東南アジア系の観光客であふれ返っているではないか。
彼らはどこにでも密集し、こぼれんばかりにあふれ、通路をとうせんぼしてスマ
ホを掲げ、そしてワアワア、きゃあきゃあ、喧しきこと言わんかたなし。彼らの密
集地を通り抜けぬるは到底困難である。横っ飛びに逃げ出した。
観光地と名がつくところは、どこもこんな状態になったような気がする。日本は
キッチリと観光立国になったのだろうか。まあ、産業がどれもこれも低空飛行を続
けているようだから、外貨を稼ぐにはこれしかないのだろうが、少しうるさい。
などといっても、ちょっと昔の日本人は東南アジアなどにドカドカ押しかけ、や
りたい放題、したい放題、物価の安さに優越感すら抱いたような気もする(行った
ことはないが)。今の日本は円安で当時の東南アジアになったのだろうか⁉
静かで美しい忍野八海よ、ふたたび。