あ~あァ、また仕事だなあ、と言う感慨は遠い昔の情。
なにしろもう退職したのだし、そしてもう何年にもなるのだし、明日からまた仕事だァ、イ
ヤだなあ、という気持ちも遠い昔の出来事だったように思われる。いまは世間のいろいろ
からすっかり解放され、なんの義務もなく、ストレスもなく全面的によろしい。
これは齢をとってからの最大に「いいこと」のひとつだと思われる。いつまでも元気で働
ける能力があるなら別だが、社会で働くというのはそれなりにストレスを受けることも多
い。このストレスと言うのに、案外と人間は弱くできているようだ。困ったもんである。
ともかく正月の永い休み明けは、無理々々仕事に復帰しなくてはならないから、ひとし
おイヤだな感が強い。この長い休みに、呑んで食って寝て、また呑んでと言う生活だった
ものが、一夜明けてみれば、それらのよろしきことを全面的に断ち切らねばならない。
これはもう、そうとうに由々しきことではないだろうか。懶惰の限りに身を任せていたも
のを、全部断ち切ってしまえと言われても、そうそう急には参らぬ、ちょっと待ってくれ、
徐々に、だんだんと、ゆるゆると断ち切る故、ちょっと待ってくれ、と言いたくなるだろう。
それはともかく、我が仕事始めはどういうことになるのであろうか。家の中の大片づけ、
と言うのがある。正月に離れて住む家族が来て泊まった。ので布団類がいっぱい出たまま
だし、食器類も同様、これを日に干したり、洗ったりしてどこか隅の方へ押し込める。
しかる後に家じゅうに掃除機をかけ、元の少人数のつましい形に整える。いつものとお
り、布団も食器もごく少ない数で充分だから、そうなっていないとなんだか落ち着かない。
それがとりあえずの「仕事始め」であるので、さあ! いざ敢行せん、仕事始め!