酒はどちらかと言えば下戸の方だが・・・
秋が深まってくると、どういうわけか燗酒が旨そうに思えてくる。これはひとえに、”白玉
の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり”という歌にまるっきり影響されて
いるためだろうと思うけれど、しかし温めた酒はもしかするとやっぱり旨い。
チビッとだけしか飲めないくせに、大酒呑みの牧水を気取るとは、とんでもないことだろ
うけれど、日本酒というのは本来温めて呑むものであるらしい。世界中の酒は死ぬほどあ
れども、温めるのは外に紹興酒があるぐらいで、大部分は常温又は冷やして飲むらしい。
昔に比べれば、世界中のあらゆる酒が手に入るようになってきた。スコッチ、ウオッカ、ワ
イン、ブランデー、ジン、白酒、紹興酒、ラム・・・もう見境なしであるから、日本人はよっぽ
どの呑み助だと思われても仕方ないが、実は西洋人に比べればあまり強くない。
昔若かりし頃、ウィスキーはアタピンの安物、ワインなんてベタベタ甘いまがい物、そん
な程度だったが、外国モノを引っ張り込んで、それをああしてこうするうちに、たちまち国
産の素晴らしいものができ上ってしまった。これぞ日本人が得意の換骨奪胎なるや。
酒を呑めば多かれ少なかれ、まずは酔う。その酔いかたは人によって実に様々で、百人
いれば百通りの酔い方があるようである。しかし酒に強い人がいくら飲んでも酔わない、
というのは、実は可哀想でもある。ちょっぴりでテもなく酔っぱらうぐらでちょうどいい。
酔ってくると、だんだん意識が朦朧として、来しかたに積み重なった失敗、悔悟がわらわ
らと浮かんできたりする。それは屁にもならないから、大急ぎで頭を振って、どこかへ放り
投げてしまう。そして、いささか惚けが進んだように酔うのが最上と思われる。
それとも酔ったようにボケるのか?