郡上八幡の街中はいたるところ綺麗な水が流れる。
なにしろ水が豊富な街であるらしい。地図を見ると有名な長良川に吉田川という川が合
流し、そこに郡上八幡の街が開けている。河川の合流点だからだろうか、街中に水路がめ
ぐらされ、どの水路も爽やかな水音を響かせて滔々と流れている。
夏になると子供たちが川面をめがけて身をひるがえす学校橋は、吉田川にかかってい
る。覗いてみると青い水が小さな渦を巻きながら流れている。川べりにゴツゴツと岩が突
きだして、狭い水面めがけて身を踊らせるのは、いささか勇気がいるだろうと思う。
吉田川の北側、長良川沿いに古い街並みが残っている。江戸時代の宿場町のように、
狭い通りにびっしりと軒を連ねて、小さなお土産屋さんなどが並んでいる。家と家の間に
隙間がなく、奈良井の宿を思い起こさせた。突き当りに堂々たるお寺が見えている。
しかし街の中はどこも静かで、観光客の姿も見かけない。いまがまだ春の初めで、シー
ズンではないからなのかもしれないが、黒いトタン屋根の簡素な駅舎にも、その小さい駅
前広場にも人影がなく、春の長閑な光の中で、森閑と静まり返っている。
その古い街並みがある東側にこんもりした森があり、四層白亜の天守が聳えている。つ
づら折れの道をを登ると、天守の正面に出て見上げる。狭い階段の脇に立って見おろす
と、城下の屋根が山の隙間に並んで、その中を長良川がうねるように流れている。
郡上八幡の城主、青山氏の江戸屋敷があったあたりが、青山という地名となって現在に
残っているという。また、「郡上踊り」という盆踊りが有名だが、その切々たる哀調を帯び
た調べが、毎夜々々周りを囲んだ山影の、虚空に立ちのぼってゆくのだろうと思う。