2025/07/05

山百合の香りに酔いて沢辺道



 


 数あるユリの中では山百合が一番いい。


 なんといってもあの強烈な香りに圧倒される。あの香りが鼻孔を通過するとき、

なにやら酔ったようにくらくらする。またあの大ぶりな、堂々とした、王様を思わ

せる花がいい。押しも引きもされない風情で立っている。


 この近くだと、奥多摩の多摩川渕でよく見かける。どういうわけか知らないけれ

ど、平らな道っぱたには咲いてなくて、崖っぷちの危うい場に咲いていることが多

い。そう簡単には近寄れないから、毎年楽しめる。



 山百合の花が一番いいから、球根を送ってもらって、家の隙間に植えてみた。一

年目はなんとか花をつけたものの、二年目はもうよれよれになってしまった。三年

目でとうとう芽さえ出さなくなってしまった。やんぬるかな。


 環境が変わったので生育が難しいのか、育て方がまるでデタラメだったのか。な

にしろ球根を隙間に埋めただけで、ほったらかしたので何が悪いのか分からない。

それに引き換え、花屋から買ってきた鉄砲ユリに似た花は、毎年元気だ。



 ユリの根っこは食用にするという。なんと言うことをするのだ、と思う。こんな

綺麗な花のおおもとをムシャムシャ食ってしまうなんて、野蛮人と言わなければな

らない。まあ、飢饉やなにかだったら止むを得ないかもしれないが。


 そうでなく、旅館の夕飯にこれが出てきたりする。きれいな花を犠牲にしても食

うのだから、どれほどの美味かと思うが、しゃりしゃりした歯ざわりだけで、とん

でもないような旨味は見当たらない。これを食うのはやはり罰当たりだ。


 ヒトというのはほんとになんでも食うなア。



0 件のコメント:

コメントを投稿

訪問記録