2025/07/16

忍野にて共に富士仰ぐ月見草
















 忍野八海は富士の麓にある。


 ときおり行ってみたくなる。最初に行ったときに、その湧き水の池にイタク感動

した。5mもある深い池の底が、きらきら見えるほど水が澄んでいる。富士の伏流

水がここに忽然と湧き出しているらしい。なにしろ水が美しい。


 周りの田舎びた佇まいもよかった。池の水を集めた小川の縁を、のんびりトコト

コ歩くのがとても楽しい。この川は流れ下って桂川となり、更に相模川となって湘

南の海へと続く。月見草が咲いていた。富士は真ん前にどっかりと。



 この時の印象がとても強かったので、しばしば頭にぽっかりと浮かび上がり、ま

た行ってみたくなる。それで数年前、車をごろごろ転がして行ってみた。ところが

どっこい、東アジア、東南アジア系の観光客であふれ返っているではないか。


 彼らはどこにでも密集し、こぼれんばかりにあふれ、通路をとうせんぼしてスマ

ホを掲げ、そしてワアワア、きゃあきゃあ、喧しきこと言わんかたなし。彼らの密

集地を通り抜けぬるは到底困難である。横っ飛びに逃げ出した。



 観光地と名がつくところは、どこもこんな状態になったような気がする。日本は

キッチリと観光立国になったのだろうか。まあ、産業がどれもこれも低空飛行を続

けているようだから、外貨を稼ぐにはこれしかないのだろうが、少しうるさい。


 などといっても、ちょっと昔の日本人は東南アジアなどにドカドカ押しかけ、や

りたい放題、したい放題、物価の安さに優越感すら抱いたような気もする(行った

ことはないが)。今の日本は円安で当時の東南アジアになったのだろうか⁉


 静かで美しい忍野八海よ、ふたたび。




2025/07/15

奥多摩の渓谷涼しラフティング


                              (クリック拡大)
 

 奥多摩に「大多摩トレイル」という遊歩道がある。


 青梅線の「古里駅」~「奥多摩駅」間を、多摩川の右岸に沿って歩く約8㎞の

道だが、渓谷あり、ダム湖ありでなかなかに変化に富んでいる。山の急斜面を削

って作られたところもあって、しばしば崖崩れで通行不可となる。


 しばらくの間崖崩れで通れなかった箇所が、通れるようになったらしいので、何

年ぶりかで歩いてみた。古里駅→奥多摩駅が正式ルートなのかもしれないが、これ

は登り道である。登りは死ぬほどイヤだから、奥多摩駅から下ることにした。



 奥多摩駅到着、今日は休日、観光客わんさか。海沢集落から「数馬狭遊歩道」に

入る。山の急斜面を削って、人ひとり通れるほどの細道が続く。左手は多摩川の流

れ、始終木々の隙間から沢音が聞こえてくる。道は歩きやすい


 数馬狭橋に到着。ここは白丸ダム湖の上流端。ボードに乗った「アメンボ」がわ

らわらと浮かんでいる。見ていると実に楽しそうに水面をス~イ、ス~イと行きか

っている。若い男女が多いのだろうと思う。いいなあ、羨ましいなあ。



 ここから先は白丸ダム湖の岸辺に沿って歩く「白丸ダム湖畔遊歩道」だ。さっき

の道とあまり変わりはなくいい道だ。ダム湖の水面が近くなって、「アメンボ」の

動きがよく分かる。若い女性が多いような気がする。


 ボードに座ったまま立ち上がれない人、すっくと立ちあがってスイスイ行く人、

様々だ。これは意外と簡単そうに見えるから、ジイバアでもできるだろうか。湖岸

でこのボードを担いだ中年夫婦を見たから、ひょっとしてジイもOKかも。





 やがてダムの堰堤に到着。ここから先は「鳩ノ巣渓谷」となる。渓谷の手前に休

憩所があり、中高年以上の人たちが大勢休んでいた。若者はほぼ通過している。休

憩所のすぐ先が「魔の130段石段」の急登、下りでよかったなあ。


 鳩ノ巣渓谷は大岩がごろごろ流れを遮って、水はその隙間を無理やり通り抜けて

くる。怒った流れが岩を嚙み、なにがなんでも流れようとしている。道は大岩の隙

間を縫うように作られているので、大いに危なっかしい。山百合が咲いていた。



 鳩ノ巣渓谷から寸庭狭に行く道は、まず里道の登りから始まり、ずっと登りっぱ

なしで山道に突入しても、さらに登り道が続いた。バテた。ちょこっと登って止ま

って息を整え、またちょこっと行って休み、尺取り虫の登り方。


 ようやく天辺の休憩所に死ぬような思いで到着。ここから「松の木尾根」の下り

道。だが傾斜がきつい。こんな山道を小さな子供たちがわらわら登って来るのだか

ら、こっちが齢を取り過ぎたか、あるいは日頃の鍛えが足りないのか、どっちだ⁉


 山道を下りきって寸庭狭。小さな滝があって、生き返るような涼しさを感じた。

多摩川と沢の合流点の河原で、高校生のカップルが遊んでいる。女の子の方は退屈

そうだった。橋を渡って古里の里道を駅に向かう。「大多摩トレイル」終了。



 古里の駅から電車で御嶽駅へ。御岳駅到着。川沿いを御岳渓谷へ行く。やはり渓

谷だから、川波がどんぶらこと流れている。その川波を利用して、競技カヌーの練

習や川下りカヌーでの波下りや、ラフティングをしている。


 岸辺の岩に座って、ラフティングをぼんやりと眺める。ラフティングの若い女の

子たちの嬌声が、夕暮れの渓谷に木霊する。女の子たちはどんぶらこと流れていっ

て、やがて見えなくなった。夏の渓谷の青春の一コマ。


 奥多摩の夏はなかなか面白い。



短い動画(BGM・キャプション)

www.youtube.com




2025/07/11

越後みち夏山遥か雪残し

 



 青く霞んだ中に白い残雪が光る。

 谷川岳のど真ん中をひょうと抜けた向こう側、麓は緑濃い夏なのに、遥かな山は

冬の名残をとどめている。この残雪の山の麓を、特段のあてもなくふらふらと歩き

回ったことがある。なにがあるわけでもない、ただの山すその里道だが。

 きっかけは、この地の風物を描いた素人の絵をネットで見たから。同年代と思わ

れるその人の絵――山や田んぼの佇まい、子供時代の祭りや遊びの思い出、山里の

家や森の風景、そのどれもが自分の記憶と重なり合い、強烈に引き付けられた。


 それでたまらなくなって、その俤を追ってこの地にすっ飛んできた。なんとま

あ、描かれた風景がそっくりそのまま残っている。橋を渡る少女の後ろ姿、遥か山

を望む川原の立葵、白壁を板壁で守る堅牢な家々、祠の中の長押の写真・・・

 その風景を一つ一つ拾い集めながら、里の中を歩くのはとても楽しかった。中で

も孫と爺さんが遠く残雪の山を見ている光景は、まるで今の自分を見ているよう

な気がした。遠い絵の世界が、現実に目と鼻の先にある。










 

 それほど広くもないその山里の中を縦横に歩き回り、絵の余韻に浸って半日を過

ごし大満足した。しょうもない爺さんの郷愁だが、他人はともかく本人にとっては

しょうがあろうがなかろうが、玉のように大事な想い出なんである。

 夕方、後ろ髪惹かれる思いでその地を離れ、山ひとつ越えて、古い草臥れたよう

な街にたどり着いて、居酒屋で酒を呑んだ。地酒がことのほか旨かったけれど、残

念なことに下戸で量を呑めない。強かったら夜更けまで呑んでいたかったなあ。


 越後の道はどこもみな思いで深い。




訪問記録