(ネットから)
厳寒の時期に永平寺へ行ったことがある。
いやはや、ひたすらに寒かった。森厳として静まる山と、そこに残る凍てついた雪が、い
っそう寒さを感じさせたかもしれない。また、ここで行われる修行の厳しさを勝手に想像し
て、この場所は寒いものだと最初から決めつけていた、ということもあるかもしれない。
椅子に座って10人ばかりの見学者が、しんとして待っていた。この部屋は暖房が利いて
いてほんのり温かったが、後になって広い廊下や階段にに出たら、周り中から寒気に押さ
れて、ギクシャクするほど寒い。でも案内する若い僧侶はスリッパも履ていない。
ここに来た修行僧たちが日頃どんな生活をしているのか、最初に座っていた部屋で説明
があり、トイレの使用、お風呂の入り方まで厳しい規則があることを聞いた。なにしろ風呂
は小さな手桶5杯のお湯だけで全て済ませるのだそうで、今でも記憶に残っている。
ひととおり説明を聞いてから部屋から廊下に出たら、体が一気に寒さに囲まれ、身動き
できないように感じる。廊下や階段の板は、ぴかぴかに磨き込まれ光っていて、それがま
た、キンキンと音を発するが如く冷え固まっているように思われる。
僧堂、仏殿、法堂など主な部屋を案内してもらったが、どこもまあ、バカでかく広く森厳
と静まり返り、寒さが一層強く感じられる。修行僧たちは、この火の気のない大きな部屋
で毎日の務めを送っているのだろうと思い、それだけでもえらい人たちだと思った。
説明や案内をしてくれた若い僧侶は、白皙で目が澄んでいて、とてもきれいに見える。
毎日の厳しい修行と、簡素極まりない食事ををしていると、人間というものはこんなにき
れいになるものかと思った。もはや、自分の小汚い貧しい顔をどこかに隠したかった。
あれから長い時が流れた。今でも同じ厳しい修行だろうナア