2026/02/19

室内は早ばや咲いて君子蘭

 



 暖かい室内では君子蘭が早く咲く。


 幅広の葉っぱは、ふてぶてしいが花は意外に繊細な形をしている。小型の百合のような

形で、外側が目の覚めるように鮮やかな橙色、中の方が少し黄色がかっている。中から突

き出した蕊がはっきりしていて、それが繊細さを感じさせるようだ。


 ところがこの植物は、意外や丈夫一点張りらしい。手入れを怠り放っぽらかしにしてもな

かなかダメにはならない。そのうえ、やたらと増える。茎の脇から芽が出て、あれよ! と

いう間に大きくなってしまい、そうして何ごともなかったように花を咲かせる。



 たった一株がどしどし増えて、狭い室内に収まらなくなってきた。捨ててしまうのも忍び

ないから土の上に出してみた。冬の間は、寒冷紗で覆い根元をわらなどで保温する。よほ

どの朝の低温か又は大雪でも降らなければ、元気に越冬し彼岸のころ花を咲かせる。


 そんなことを数年続けてみたが、それも面倒になってきて土に植えたものはすべて処分

することとした。なにしろいつも元気いっぱいだし、やたら増えるし、面倒など見なくてもド

カドカ育つから、ついつい手抜きもし、面倒くさくもなって処分してしまった。



 それでも未練がましく一鉢、二鉢を残して、冬近くなると室内に取り込み、温かくなると

表にブン出している。この方式だと手間いらずの簡単で、毎年春と冬に表に出したり部屋

に入れたりするだけで済む。なにもかもが面倒くさく感じるお年頃、ちょうどいい。


 そうしたらどういうわけか、決まった時期に決まったように花が咲かなくなった。どうも、

あまりにも粗雑に扱ったから、ぷんすか怒っているらしい。であっても、扱いを丁寧にする

気はもうない。よもや花が咲かなければ、そんなものかと言って澄ましていることにした。


 それにしても君子蘭だなんて、偉そうな名前だなあ!




2026/02/18

雪解けや里すがすがし白川郷

 



 雪解けのころ白川郷を訪れた。


 この日は春らしい温かさで、雪がしんしんと降り積もる合掌造りのイメージがあまり湧か

なかったけれど、浅い春の空気はどこかピンと張りつめていた。集落の向こうの端の方か

ら、細い小道を歩くと、合掌造りの大屋根はどれもたくましく、堂々としている。


 家々の脇や田んぼにまだ雪の塊が残っていて、それだけ見るといかにも寒々しい感じ

だが、もう春の気温になっている。道端や畔にもわずかながら青みがさして、ともすれば

一斉にすごい力で芽吹くべく待機している。小高い丘に登って集落を見下ろした。



 周りを囲む山肌には、まだ深そうな雪が見えた。山は依然として冬だが、一足先がけて

里に春が来たのかもしれない。そういえば、里中には地元の人の姿は少ないが、それでも

家の前で二、三人が井戸端会議中で、その誰もが明るい表情を見せている。


 小高い丘から降りて。帰り道は別なルートを歩く。くしくも屋根の吹き替えをしている

家があった。片側はもう先に済んでいるらしく、別な片面に巨大な梯子を渡して、5,6人

の職人さんが手際よく作業している。案外に少人数だったので意外に思った。



 雪解けの白川郷にそれなりに感動したが、帰りの道々思った。観光地はそのもっとも見

ごたえのある時期に訪れなければならないのではないか。ここの白川郷であれば、やはり

冬真っただ中の、合掌屋根にしんしんと雪降り積もるを見るべきであり、雪解けなどと言

う半端な時期では、その地の魅力が十分わからないのではないだろうか。


 しかし、それはふと思い立ってできることではない。無慮1年も前から宿を予約し、電車

やバスも予約し、そうして大ごとのように出かけねば、その見ごたえある景色は見られな

いことになっている。それはもう、無精者にとっては思うだに大ごとであり、とても無理だ。


 観光地、遠くに有りて思うもの。




2026/02/17

大宇宙ぎんがの如き犬ふぐり

 



 まるで春の陽気になると聞いて川っぷちを歩いてみた。


 河川敷の草野球場で少年たちが走り回っている。どの子ももう半袖で、未だダウンなど

着ているこっちがなんだか恥ずかしい。河川敷は広々と枯芝が広がって、向こうでもこっ

ちでも少年野球が真っ盛り、何れも真剣そのものの表情。ダウンを脱いで暫し見学。


 河川敷の地面の一角が、日当たりがいいのだろうか、緑が芽生えて犬ふぐりが群生して

いる。この青く輝く花を見ると、いつもながら大宇宙に広がる無数の銀河のように見えて

仕方がない。暗い虚空(地面だが)をバックにして、星々の大集団が浮かんでいる。



 川っぷちに沿って作られた遊歩道を上流に向かって歩く。川と言っても本流ではなく小

さい支流だから、向こう岸の桜の並木もよく見える。こっち側の岸辺は左手が崖になっ

て、瑞々しいアオキが生え、枝先に花芽なのか葉っぱ芽なのか、芽吹き始めている。


 崖から水が湧き出しているらしく、細い流れにってそこらの地面に、目の覚めるような鮮

やかな緑のクレソンが生えている。お婆さんが腰を屈め小さいハサミで摘み取っていた。

今晩の食卓には、ひりひりと爽やかに辛い大量のサラダが供されることだろう。



 温かい日ざしのせいなのかどうか、水鳥が川面に出ていた。マガモの雄がきらきらする

ような金属光沢の羽をさらしているし、アオサギが傲然たる態度で水に立ちこんでいる。

別のところには、カワウが二羽仲良く石の上に突っ立って羽を乾かしていた。


 もちろん子供たちもいっぱい遊びに出ていて、そこいらの川岸で目にした。男の子も女

の子も、いつでもどこでも、元気いっぱいに跳ねまわっている。きっと本格的な春になっ

たら、わらわらと家から抜け出して、そこらじゅう子供で一杯になるだろう。


 あるきはじめた みいちゃんが・・・おんもへ出たいと 待っている” 


 


訪問記録