雪解けのころ白川郷を訪れた。
この日は春らしい温かさで、雪がしんしんと降り積もる合掌造りのイメージがあまり湧か
なかったけれど、浅い春の空気はどこかピンと張りつめていた。集落の向こうの端の方か
ら、細い小道を歩くと、合掌造りの大屋根はどれもたくましく、堂々としている。
家々の脇や田んぼにまだ雪の塊が残っていて、それだけ見るといかにも寒々しい感じ
だが、もう春の気温になっている。道端や畔にもわずかながら青みがさして、ともすれば
一斉にすごい力で芽吹くべく待機している。小高い丘に登って集落を見下ろした。
周りを囲む山肌には、まだ深そうな雪が見えた。山は依然として冬だが、一足先がけて
里に春が来たのかもしれない。そういえば、里中には地元の人の姿は少ないが、それでも
家の前で二、三人が井戸端会議中で、その誰もが明るい表情を見せている。
小高い丘から降りて。帰り道は別なルートを歩く。くしくも屋根の吹き替えをしている
家があった。片側はもう先に済んでいるらしく、別な片面に巨大な梯子を渡して、5,6人
の職人さんが手際よく作業している。案外に少人数だったので意外に思った。
雪解けの白川郷にそれなりに感動したが、帰りの道々思った。観光地はそのもっとも見
ごたえのある時期に訪れなければならないのではないか。ここの白川郷であれば、やはり
冬真っただ中の、合掌屋根にしんしんと雪降り積もるを見るべきであり、雪解けなどと言
う半端な時期では、その地の魅力が十分わからないのではないだろうか。
しかし、それはふと思い立ってできることではない。無慮1年も前から宿を予約し、電車
やバスも予約し、そうして大ごとのように出かけねば、その見ごたえある景色は見られな
いことになっている。それはもう、無精者にとっては思うだに大ごとであり、とても無理だ。
観光地、遠くに有りて思うもの。
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