2025/07/23

朝さんぽ急げいそげと蝉の声

 



 明け方5時ともなればもう陽がさしている。


 東の空から、「ウヒヒヒヒ、さあ今日もガンガンいってみようかぁ」などといい

ながら無情の日が昇って来る。そして河川敷の雑木林や段丘涯の森から、み~んみ

~ん、じいじい、しゅわしゅわと蝉の合唱が始る。


 背中から「ウヒヒヒ」に炙りたてられ、右や左から「み~んみ~ん、急げ急げ」

と蝉に急き立てられ、呑気に散歩などしていられたものじゃない。頭の中は帰って

からの冷た~いシャワーで一杯になるが、かといって早足になるわけでもない。



 だいたいの決まった時刻に散歩していると、決まった人と出会うことが多い。ひ

とりは60歳台位のおじさんで、マラソンマンである。苦しそうな表情で走って来る

が、どこか満足げな安らぎも見せている。Tシャツのに胸も背中も汗びっしょり。


 もう一組は、6,70台のおばさんと40代のお姉さんとのペア。この人たちは案に

相違して足が速い、す~っと音もなく抜かされる。かくてはならじと、必死になる

が、ひたひたとすぐ後ろに迫って来る。気がきじゃない。



 散歩で出会う人達も皆、蝉の声を聞いていることと思う。ああ! セミが鳴き始

めたなあ、とか、今年は少し早いんじゃないか、とか、そんなことを頭に浮かべな

がら、走ったり歩いたり、あるいはベンチに腰を下ろして聞きほれたりしている。


 西洋人は秋の虫の音を単なる騒音だというらしい。となると蝉の鳴き声はどうな

る? 大騒音だろうか、それとも蝉はまた別だ、というのだろうか。蝉しぐれを大

騒音だとは思わないが、散歩のときだけ急かされるのは、困ったものである。


 「やがて死ぬけしきは見えず蝉の声」(芭蕉)  




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