明け方5時ともなればもう陽がさしている。
東の空から、「ウヒヒヒヒ、さあ今日もガンガンいってみようかぁ」などといい
ながら無情の日が昇って来る。そして河川敷の雑木林や段丘涯の森から、み~んみ
~ん、じいじい、しゅわしゅわと蝉の合唱が始る。
背中から「ウヒヒヒ」に炙りたてられ、右や左から「み~んみ~ん、急げ急げ」
と蝉に急き立てられ、呑気に散歩などしていられたものじゃない。頭の中は帰って
からの冷た~いシャワーで一杯になるが、かといって早足になるわけでもない。
だいたいの決まった時刻に散歩していると、決まった人と出会うことが多い。ひ
とりは60歳台位のおじさんで、マラソンマンである。苦しそうな表情で走って来る
が、どこか満足げな安らぎも見せている。Tシャツのに胸も背中も汗びっしょり。
もう一組は、6,70台のおばさんと40代のお姉さんとのペア。この人たちは案に
相違して足が速い、す~っと音もなく抜かされる。かくてはならじと、必死になる
が、ひたひたとすぐ後ろに迫って来る。気がきじゃない。
散歩で出会う人達も皆、蝉の声を聞いていることと思う。ああ! セミが鳴き始
めたなあ、とか、今年は少し早いんじゃないか、とか、そんなことを頭に浮かべな
がら、走ったり歩いたり、あるいはベンチに腰を下ろして聞きほれたりしている。
西洋人は秋の虫の音を単なる騒音だというらしい。となると蝉の鳴き声はどうな
る? 大騒音だろうか、それとも蝉はまた別だ、というのだろうか。蝉しぐれを大
騒音だとは思わないが、散歩のときだけ急かされるのは、困ったものである。
「やがて死ぬけしきは見えず蝉の声」(芭蕉)
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