2025/08/20

うだる日もスイカ一片の涼味かな

 



 昔スイカは貴重な食べ物だった。


 なにしろ売っているのは真夏の1か月ぐらい、しかも、どかんとデカくて値段もそれなり。

特に育った田舎では採れない、どこか遠くの暖かい地方から送られてくるのだから、それ相

応の値段であった。ビンボー暮らしでは、ひと夏に一個買うのが精いっぱい。


 子供たちはなにしろ、あの真っ赤っかの実に言い知れぬ魅力を感じた。なんと言う旨そう

実だろう、なんと言う甘そうな実だろう、あれを腹いっぱい、げっぷが出るほど、際限なく

食いたい。なにしろ家族を押しのけてでも独り占めしたい、そう思ったものだ。



 なんといってもスイカは、そのまま実をガシガシ食うのがだいご味である。適度の厚みに

切ったやつを、あんぐり大口開けて、がぶりといく、しゃくしゃく、じるじる、無我夢中で

食う。これぞスイカの味、これぞ日本の夏、いやはや、うめえちゃ。


 日本はさすがお刺身の国である。なんでも”生”で食するのを身上とする。果物一般でもた

いがいそのままの姿で生食をする。これを絞ったりしてジュースなどにしてしまっては、よろ

しくない。ジュースなどにすると、だいご味という味わいがどこかに消えてしまう。



 日本のように、素材そのものの味、つまり生食をとても大事にする文化は少ないのではな

いか。たいていは素材をいじり倒し、味を重ね倒して、これが料理だ! と威張っている。

まあ、それはそれとして旨いのだろうが、日本はどうしてこうなったのだろう。


 一つには、長いあいだ肉食ではなく魚食であった、というのがあるかもしれない。肉はど

うしたって生では食えない。もう一つは、その国の食文化はたいてい宮廷から流れ出したも

のと言われるが、我が宮廷は、手間暇かけず案外質素だった、といえるかもしれない。


 生食、これが2千年の文化だ!




0 件のコメント:

コメントを投稿

訪問記録