本来の秋雨前線らしく天気がぐずぐずしていた。
しかし三方五湖の山道を登るときには運良く晴れあがってくれて、ほんとにきれいな湖
を見ることができた。左前方の淡い水色は、あれは紛れなく日本海の波なのだが、それに
比べ、手前の湖の色は形容しがたい水の色を見せている。ここから五つの湖全部が見渡
せたわけではないが、この光景を見て十分満足した。
三方五湖、それはとてもきれいな湖沼群なのだと聞いていた。それで前々から一度は見
てみたいという望みがあって、ちょうどこのとき、遥か出雲まで、オヤジ3人車で行く途中
であった。山陰の9月はやはりはっきりしない天気が多いと言われたが、この時ばかりは
かっきりとよく晴れ、眼下に広がる群青の水や、遥か日本海の浜辺がよく見えた。
三方五湖を地上から見たのでは、湖の周りの草しか見えない筈だから、どうしても是が
非でどうあっても、どこか上から眺め下ろす必要がある。が、その山道に入る入口が分か
らない。カーナビでも見付けられないものはあるらしい。しょうことなしに店のおばさんを
煩わし、聞いたところとても親切に教えてくれた。
あのおばさんは(と言ってもまだ40代ぐらいだったが)、いまどうしているだろう。今も元
気で店番をしているだろうか。おばさんの語り口はゆったりとして急がず、細かい点まで
忙しいかもしれないが、嫌がらずに教えてくれた。おばさんの話を聞きながら、われらのは
やる気持ちや焦りがす~~っと消えてゆき、すっかり落ち着きを取り戻した。
どうも山陰の人はゆっくりと丁寧に話すようだ。太平洋側の弾けるような早口では、なん
だか喧嘩を売られているように感じるが、こっち側の人は別段焦りもしないし、めんどくさ
がる様子もない。この後砂丘で出会ったご夫婦も、ゆったりと落ち着いた話しぶりだった。
こっちの人たちは、どうやら、人生を急がないらしい。時間もゆるりと流れているようだ。
三方五湖の山道を登って、駐車場がある場所から眺め下ろしたのだが、どうやらこのさ
らに上に展望広場なる「天空テラス」なるものがあるという。ただし、ひとりセンエンだとも
いう。我らはそのセンエンをケチった。若え娘っ子じゃあるまいし、テラスでお茶などしなく
ても別にいい。ここからのこの眺めだけで十分なのだった。
出雲は遠く、思い出すことは多い。
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