葛はうんと威張っている。
向かうところ敵なし、そこら中が我が天下、どこでも伸びてかって放題、ぐずぐず言う奴あ巻取っ
て締殺してしまう。なにしろ夏中ドカドカと延び放題に延びて、人が歩く道でさえひょっとすると覆い
隠して知らん顔、その増殖繁茂ぶりはどこまでも止まることがない。
このイケ図々しい繁茂は周りの植物に対する思いやりが一切なく、「ちょっと遠慮するかなア」とい
う自覚に欠けている。たまたま葛の近くに芽生えた草は大迷惑をこうむる。たちまちのうちに絡みつか
れ、押し倒され、上に大きな葉を広げられて日光さえ遮られてしまう。
かような案配で、葛は「植物のクズ」と言われて嫌われている。植物がみんな、どうしようもない、と
諦め、出来るならそばに寄りたくないと匙を投げている。しかあ~し世の中は広いものである。この
葛の上前を平然とハネるやつが存在する。それは、だれあろう人間である。
春先に葛が若葉を出し始めると、そそくさと行って若葉を毟り取って天ぷらにする。夏に葛の茎が
遠慮なく伸びたところで、刈り取って綱や繊維にする。花が咲けば、これも毟り取って来てお茶にす
る。そればかりか、根っこまで掘り起こして、葛粉にしたり餅にしたりする。
人間は葛の全身を隈なく搾取してはばからない。葛の方も「いやあ、オレもいけ図々しさでは引け
をとらないと思っていたが、負けた、人間には負けたよ」と嘆いているという。それはもっともだ、人間
はこの地球上で一番傍若無人で図々しい生き物、なんの葛如きにしてやられるはずがない。
しかしそれも今は昔、葛の若芽を天ぷらにする人も、花をお茶にする人も、ましてや根っこを掘り起
こして葛粉を取り出す、なんてべらぼうなことをする人も、もういないだろう。かくのごとくにして、葛
の天下が再び巡り来たようなわけで、いま葛は土手っぱらで好き放題のかって放題を続けている。
葛根湯だけは年に数回お世話になってます。
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