さあ十月、やっとこさ涼しくなった。
こうなると、野っぱら道を無暗に歩きたくなって、どこそこのどのあたりの道がよかったと
か、あの道を何処までも行ったらどこへ行くんだべ、などと脳みその薄暗い片隅から、な
けなしの朧な記憶が浮かんでくる。でも、どこか歩いたことがない道を歩きたい。
登り坂は親の仇、忌み嫌うこと蛇の如し。なにしろ坂道をほいほい歩ける体力がない、
根性もない、楽しくない。なんにもないから、やっぱり平らな道がいい。こうなるとなにやら
野っぱら道を探すのが大変である。道は無限に転がっているというのになあ。
地図を見て野っぱら道を探す。まずは等高線を見て、山道だったら即座に脚下、ほぼほ
ぼ平ら、という道を探すが、それはおおむね平野にある。平野にはだいたい街がある。街
中は歩きたくない、うんざりする。こうなれば、おいそれと道は見つからない。
どこだっていいじゃないか、行き当たりばったり、勝手気ままに行っちまえ! という手が
ないことはないが、それだと駅まで行って、はて、どっち方面の電車に乗ればよかっぺ
か⁇ と出鼻ッから躓き、スッ転んでしまう。それでは一日中駅の中で動けない。
まあ、それはそれとして、また昔のように、どこか電車の線を一本選び、その沿線をぶら
ぶらしてみようかと思う。なにしろ線路は放射状に四通八達、一時間も乗れば都内のごち
ゃごちゃを抜け出て、空が高くなって、田舎道を歩けるはずだ。
そこにはアッと驚く為五郎のような、花や紅葉の名所はもちろんないけれど、だれも歩い
ていない、清閑な、昔ながらの田んぼ道が、づう~っと先の方まで伸びているだろう。そこ
を、ぽつらぽつらと彷徨うように、あてどないように、歩ければそれでいい。
我が帰し道もそんなもんだった。
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