今の子供たちは恐らくアケビを誰も知らない。
遠い昔、山里の子供にとっては、これはもう紛れなき山のご馳走だった。実の中の白っ
ぽい種の部分が、ねっとりとした和菓子のようで、そしてかすかに甘いのだ。なにしろ甘い
木の実というのは、ほとんど無くて、山の中のガキンチョにとっては貴重であった。
ただし、この白っぽい部分はそのほとんどが真っ黒な種であって、その周りに着いたほ
んの僅かな餡のようなものを啜り込んで、バフっと種を吐き出すと、口の中にあるかなき
か、なけなしの、幻のような甘さが残るんである。それが秋の山のご馳走なんである。
こんなことをぐずぐず書き記していると、子供たちばかりか、今の大人だって一斉に声を
そろえて、「ええーッ、ウソ、ホントー?」と叫ばれてしまいそうだけれど、実はホントウのこ
となのだ。もっともこれはビンボー山猿であったが故なのかもしれけれど・・・
そのころだって、むろん饅頭やお菓子はあったが、そんなものは祭りやなにかのハレの
ものであって、日常つねに腹を空かせているガキにとっては、そんなホンのときたまのもの
に期待をかけるわけにはいかないのだ。なんだってかんだって、あるものは口に入れる。
長じてあるとき、山の寺に登ったら、境内の隅にあけび棚があって、たわわな実がぶら
ぶら揺れていた。たまたま近所のおばさんがいて、食ってもいいかと聞いたら、「なんぼで
も。誰も食べやしないから」ということで、あんぐりと食ってみた。
そしてたちまち、上記の如き記憶が、ワラワラと脳みその薄暗い隅から立ち登ってきて、
一瞬にして遠い山里のガキンチョに戻ってしまった。しかし現実のアケビの味は、「トテモ、
食エタモンジャナイ! 」であった。故郷は遠きにありて思うもの・・・
思えば遠くに来たもんだァ。
え、そうですか?私は一昨年だったか、友人からたくさんもらって食べましたが、おいしかったです。
返信削除まだ完熟ではなかったとか?
それとも、思い出バイアスとかいわれるやつでしょうか。