2025/10/20

美保の関静まり返って秋の暮れ

 



 

 美保神社へ行ってみたらなんとも静かなところだった。


 目をむくような大きな拝殿が、威風堂々、どっしりと建っているのだけれど、人がいな

い。「関の五本松」とか言って歌に唄われるほどだし、神社は堂々として立派だし、もう少

し観光客というものがいるものだと思ったが、オバさんがひとり参拝してるだけだった。


 今から思うと、なにしろ島根半島の端っこの端っこにあり、交通に難あり、とも思われる。

我らは米子半島から車でひょいっと水道を越えていったから、交通不便とは思わなかっ

た。が、神社までの道々、なんだか人が少ない土地だとは感じられた。



 恐れ入ったる面持ちで神社の参拝を終え、ふと見るとトンネルのような、細い道が境内

から続いていた。なんだかここへ入っていくと、そのまま異次元の時空に行っちまうような

気がした。森閑として人ひとりの影さえ見当たらない。


 看板には「青石畳通り」とあって、なんでも雨に濡れると石畳が青く光るのだそうだ。時

期が秋のはじめ、雨は降りそうにもなかったのが、ちと残念だった。それよりもここに一

体人が住んでいるのだろうかと、いぶかるほど何の音もせず、やはり異次元だった。



 出雲への旅を終えて今、ふつふつと頭に浮かんでくる「うたかた」のような思いは、なに

しろ島根県全体が、まるで秋の暮れのように静かだったということ。出雲半島も森々とし

て日本海に浮かんでいるし、宍道湖だってレジャーボートがカッ飛んでなどいない。


 出雲大社も静寂な森を背にして静かだったし、松江の街中も音が消えていた。もっとも

尋ねたのが「神有月」でない、変哲もない時だったせいもあるかもしれないが、この静かさ

がことのほか自分には好ましかった。土地の佇まいもまた、閑寂の気を醸し出していた。


 無理して行って来てほんとによかった。




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