美保神社へ行ってみたらなんとも静かなところだった。
目をむくような大きな拝殿が、威風堂々、どっしりと建っているのだけれど、人がいな
い。「関の五本松」とか言って歌に唄われるほどだし、神社は堂々として立派だし、もう少
し観光客というものがいるものだと思ったが、オバさんがひとり参拝してるだけだった。
今から思うと、なにしろ島根半島の端っこの端っこにあり、交通に難あり、とも思われる。
我らは米子半島から車でひょいっと水道を越えていったから、交通不便とは思わなかっ
た。が、神社までの道々、なんだか人が少ない土地だとは感じられた。
恐れ入ったる面持ちで神社の参拝を終え、ふと見るとトンネルのような、細い道が境内
から続いていた。なんだかここへ入っていくと、そのまま異次元の時空に行っちまうような
気がした。森閑として人ひとりの影さえ見当たらない。
看板には「青石畳通り」とあって、なんでも雨に濡れると石畳が青く光るのだそうだ。時
期が秋のはじめ、雨は降りそうにもなかったのが、ちと残念だった。それよりもここに一
体人が住んでいるのだろうかと、いぶかるほど何の音もせず、やはり異次元だった。
出雲への旅を終えて今、ふつふつと頭に浮かんでくる「うたかた」のような思いは、なに
しろ島根県全体が、まるで秋の暮れのように静かだったということ。出雲半島も森々とし
て日本海に浮かんでいるし、宍道湖だってレジャーボートがカッ飛んでなどいない。
出雲大社も静寂な森を背にして静かだったし、松江の街中も音が消えていた。もっとも
尋ねたのが「神有月」でない、変哲もない時だったせいもあるかもしれないが、この静かさ
がことのほか自分には好ましかった。土地の佇まいもまた、閑寂の気を醸し出していた。
無理して行って来てほんとによかった。
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