2025/10/21

眺めやる佐渡は秋天高くあり




 

 良寛の視線の先に佐渡がうっすら見えている。


 空は晴れあがって穏やかな陽ざしが降り注ぎ、日本海は青く穏やかで清々しい。とき

き波が寄せて崩れる優しい音が聞こえてくる。疾風怒濤の日本海はまだまだ先のようだ

が、裏山の木々の梢がほんのりと色付いてきている。厳しい冬が来るのだろう。


 良寛の背中がどこか寂しそうだが、向こうへ廻って顔を覗き込むと、目が吊り上がって

狐のような顔をしいている。優しい好々爺の面影は見えず、厳しい修行僧の風貌を見せ

ている。里の童と蹴鞠を突いて遊んだような、そんな顔つきではなかった。



 佐渡島は、ふたつの峰の間に僅かな平地があるだけで、ほぼ山ばかりという印象の島

である。その平地の狭い道を走ると、漆喰ではなく板壁の家々が並んでいて、その板壁

も厳しい潮風にたわめられ、剥がされたりしていた。寂しい風景が目に映った。


 宿の風呂場に畳みたいなものが敷かれてあったので、とても驚いた。その畳みたいなと

ろで体を洗うのだ。お湯は真っ黒けのケで、これもまたびっくりしたが、お湯そのもの

は、しっとりと優しく肌を包み込んで、まったりと入っていられる。



 狭い山道を辿って、むろん金山にも行ってみた。なにがしかを払って狭い坑道に入る。

暗くて狭くて寒い坑道のところどころにマネキンが置いてあり、電気仕掛けで腕を動かし

ている。なにやらオバさん風の女性もいて、崩したごろた岩を籠に入れている。


 むろんのこと誰もが和服の着物や半纏であって、こういう作業には大変な違和感があ

る。手にするものはせいぜい鏨と金槌、あるいはよくてツルハシであって、当然と言えば

当然だが、どれほどの厳しい労働だったかが、見しみてよく分かった。


 坑道を抜けてほっとして息を思い切り吸い込む。なんだか今まで息を止めていたような

気がする。振り返ってみると、山の頂が鉞で立ち割ったように割れている。掘って掘って掘

りまくり、遂に山まで割ってしまったのかと思った。凄いものを見たもんだ。




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