秩父往還をぶらぶらと歩いてきた。
関東平野の西のどん詰まりから山塊の狭い谷に入ると、国道299が秩父に向かって曲
がりくねりしつつ通じている。その脇に細い道が切れ切れに残っていて、これは昔の秩父
往還ではないかと思いながら歩いた。その道筋にぽつりぽつりと山里が存在している。
その山里の道に行く前に、下車駅の近くにある彼岸花群生地、巾着田に立ち寄ってちょ
うど盛りの、炎のように燃え立つ真っ赤かの花を見てきた。巾着田は高麗川が恐ろしい蛇
行をして巾着絞りのような形になり、その川っぷちが恐ろしいほど真っ赤かであった。
それはともかく、山里を歩くのは無上に楽しい。他人は「あんな所をほっつき歩いてなあ
~にがいいんだか? 」と言うだろうが、自分でも何がいいのか分からんが、とにかくい
い。山を見ても、川の流れを見ても、野っぱらの花を見ても気持ちがいい。
しかし、人影を見かけないなあ、巾着田には死ぬほど人がいたが、こっちには観光客は
むろん、里人の姿も影も見えない。たま~に、道っぱたに埋もれるようにして、婆ちゃんが
草むしりをしている程度で、こっちを見て「あれま、人だ! 」なんて驚かれる。
空は青く高い。優しい陽が照っている。道っぱたに赤いコスモスがほんわりと揺れてい
る。萩が有るか無きかの風にゆらりとそよいでいる。紫式部の実がルビーのように煌めい
ている。澄んだ浅い流れに小魚群れている。それを一匹かました鷺がゲップをしている。
高校生が帰ってゆく。ハイカーが駅への道を急ぐ。踏切の警報が鳴りやむと、里は森閑
と静まってゆく。昼下がりの陽が山の向こうに隠れて、畑がはや陰り始めた。その前の民
家も屋根だけに傾いた日が当たっている。・・・秋だなあ!
短い動画 (BGM・キャプション)