支流の小さな川だけれど、土手に桜のトンネルがある。
両岸に植えてあるので、どっちを歩いても桜の中を通って上流に向かうことになる。この
ころの陽射しも掛け値なしに明るいが、その光が桜の中に入って乱反射すると、どこを見
ても眩しいほど世の中が明るい。風もないのに、花びらがひらひら宙を舞っている。
染井吉野の並木が500mほど続いてから、次に枝垂れ桜の並木になる。赤い小さな花
びらを着けた枝がゆ~らりと風に揺れている。土手道を砂利を踏んでゆっくり歩いて行
く。土手の脇に畑があり、眩しい光の中で、人々が畑の手入れに余念がない。
桜の並木が途切れ、空が開けて青空が見える。向こうの丘陵が見えてきた。若葉が芽吹
き、それはまだ緑に染まらない、薄茶色のもあもあした霞のように見える。もう少しすると、
木の葉が萌黄色に染まり、羽毛のように柔らかく陽の光を反射する。
土手道には、花桃の大きな木が現れる。桜をしのいで一層艶やかに豪華に咲き誇る。時
にはミツバツツジの大株も見え、花桃と饗宴を繰り広げる。陽光はどこまでも明るく温か
く、春がいっぺんに怒涛のように押し寄せてきたかに思える。
支流のだいぶ上流まできて、神社の一角に出た。周りに畑が広がっている。この一角
に、今まで見てきた染井吉野、枝垂れ桜、花桃、ミツバツツジ、が勢ぞろいし、それに加え
て菜の花、連翹、芝桜、そして丘陵の新緑、ぜ~~んぶひっくるめて咲いている。
もうだいぶ歩いたはずだけれど、畑の人はまだ働いているし、日もまだ陰りそうに見えな
い。気付かぬうちに、陽が勝手に永くなったらしい。こうなってくると、ふと気づいたら、とた
んに陽が落ち込み、急激にうそ寒く薄暗くなる冬の日は、もう遠い彼方だ。
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